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アニメ『凶乱令嬢ニア・リストン』第3話で、リノキスが口にした一言。
「私はメイドではありません、侍女です。」
この言葉、気になった方も多いのではないでしょうか?
侍女とメイド、どちらも主人に仕える女性ですが、いったい何が違うのでしょう?
実は、英語の歴史を調べると、この二つは単純に線引きできない言葉だと分かります。
そして「恐ろしく強いメイド」で思い出すのが、『BLACK LAGOON』に出てくるラブレス家のロベルタ。
ロアナプラでの大暴れは、一度見たら忘れられないことでしょう・・・

リノキスとロベルタ、職業の呼び方も経歴も違う二人には、重大な共通点があります。
主人への愛情が、常識の限界を軽々と突破していることです。
しかも、リストン家にはもう一人、ロベルタと驚くほど似た行動を取る侍女がいます。
ニール兄さまに仕えるリネットです。
今回は「侍女とメイドの違い」を言葉の意味から確かめつつ、リノキス、リネット、ロベルタの規格外の忠誠心を比べてみます。
ネタバレについて:この記事の前半はアニメ第3話までの内容を中心に紹介します。後半では『凶乱令嬢ニア・リストン』漫画第9巻までと、『BLACK LAGOON』漫画第1巻「Rasta Blasta」編の展開を扱い、後者の第8巻第59話の画像にも触れます。該当箇所の前に改めてお知らせします。
侍女とメイドは何が違う? リノキスの一言から調べてみた
「私はメイドではありません、侍女です。」はどういう意味?
アニメ第3話で、リノキスを「メイドさん」と呼んだシャロに訂正したのは、「メイド」ではなく「侍女」という呼び方でした。
リノキスの正式な立場は、ニア・リストンに仕える専属侍女です。
一般的に想像される家事中心のメイドというより、ニアの着替えや日常生活の世話をし、行動に付き添い、ときには護衛まで務める人。
リノキスにとって「侍女」は、自分とお嬢様の関係を表す大切な肩書なのでしょう。
ただし、この台詞だけを根拠に「作中世界では侍女とメイドが厳密に別階級」と決めつけることはできません。
まずは現実の言葉の意味を確認してみます。
侍女は「主人のそばに仕える女性」。メイドの語源は意外にも……
日本語の「侍女」は、主に身分の高い人物のそばに仕える女性を指します。
「侍(じ)する」という言葉に表れるように、主人の近くに控え、世話や補佐をする関係に焦点があります。
一方、英語の maid は、もともと「若い未婚女性」を表した maiden の短縮形です。
英語の語源辞典によると、中世には女性の従者や宮廷の付き人という意味でも用いられ、時代が下るにつれて家事を担当する女性使用人の意味が強くなりました。
「メイドは最初から掃除専門の女性だった」というわけでもないのです。
参考:Online Etymology Dictionary「maid」
英語では「専属メイド」と「宮廷の侍女」も区別される
英語では、誰にどう仕えるかによって細かい呼称があります。
| 英語 | 日本語での呼び方 | 役割のイメージ |
|---|---|---|
| Housemaid | メイド・女中 | 家屋の清掃や家事を担当 |
| Lady’s maid | 専属メイド・侍女 | 貴婦人個人の身の回りの世話 |
| Lady-in-waiting | 侍女・女官 | 王妃など高位の女性に付き従う宮廷の役職 |
英語辞典の Cambridge Dictionary でも、lady’s maid は裕福な女性の個人的な使用人、lady-in-waiting は王妃など身分の高い女性を補佐する人と説明されています。lady’s maid/lady-in-waiting
結論として、侍女とメイドは役割や立場で区別される場合があるものの、意味の重なる部分も大きい言葉です。
「侍女が必ずメイドより偉い」「メイドは護衛をしない」といった一律の決まりはありません。
では、作中で実際に「侍女」と「メイド」を名乗る二人は、どう違うのでしょうか。
偏愛侍女リノキスと最凶メイド・ロベルタ。その仕事内容は?
リノキスは、ニアお嬢様の専属侍女
リノキス・ファンクは、ニアの日常を支える専属侍女です。
身の回りの世話から生活上の注意、護衛まで担当する頼もしい存在であり、強すぎるお嬢様の無茶を止める、数少ない常識人(?)でもあります。
……ただし、ニアへの愛情が絡まなければ、という条件付きです。
ニアお嬢様との時間を邪魔されるようなことがあると、舌打ちの連続です。
たとえ相手が誰であろうと。リノキスの偏愛エピソード5選でも、その愛情の深さがよく分かります。

©南野海風・ホビージャパン/凶乱令嬢ニア・リストン製作委員会
お嬢様を独占できないと落ち込み、距離感の近すぎる愛情表現でニアだけでなく周囲も困惑させる。
その一方、ニアを守るという責任感は本物です。リノキスの詳しい人物像はこちらの記事でも扱っています。
ロベルタは、ラブレス家のハウスメイド
『BLACK LAGOON』のロベルタは、ガルシア少年の暮らすラブレス家に仕えるハウスメイドです。
本名はロザリタ・チスネロス、かつてFARCの戦闘員として活動し、「フローレンシアの猟犬」と恐れられた過去があります。

猟犬に戻ってしまっているロベルタはかっこよすぎるし、怖くてパワフル!!
ところが現在の肩書はメイド。しかも公式プロフィールでは、戦闘能力とは裏腹に料理の腕は壊滅的らしいという、なんとも困った設定が紹介されています。
家事より戦闘が得意なメイドとは、一体……あれ、ロベルタはラブレス家のメイド長だったような。
出典:『BLACK LAGOON』アニメ公式・ロベルタのプロフィール
呼称は違うが、どちらも主人を守ることには本気
| 比較項目 | リノキス | ロベルタ |
|---|---|---|
| 正式な呼称 | 専属侍女 | ハウスメイド |
| 仕える相手 | ニア・リストン | ラブレス家、特にガルシア少年 |
| 戦闘の出発点 | 護衛経験を持ち、さらに強さを求める | 元ゲリラ兵として完成度の高い戦闘技術を持つ |
| 主人への思い | 献身・崇拝・独占欲 | 恩義・忠誠・庇護 |
| 一言で言うと | 主人が強すぎる侍女 | 主人を守るメイドが強すぎる |
肩書は違っても、主人のためなら身体を張るという一点では一致しています。そして、二人の経歴はほぼ逆方向に進みます。
【ここからネタバレあり】以下、『ニア・リストン』漫画第9巻まで、『BLACK LAGOON』漫画第1巻の展開と第8巻第59話の画像に触れます。
侍女から戦闘狂へ? リノキスとロベルタは歩んだ道が正反対
主人が強すぎる! リノキスがニアの弟子になった理由
リノキスの悩みは、常識で考えるとなかなか贅沢です。護衛として仕えるニアが、自分より圧倒的に強いのですから。
漫画第1巻第4話、そしてアニメ第3話で、彼女はニアへの弟子入りを申し出ます。
守るべき主人の方が強い。それなら主人から教わって強くなるしかない。まさに逆転した主従関係です。
やがてリノキスは冒険者「リーノ」として活動し、魔獣討伐を重ね、全国武闘大会の有力候補にまで成長していきます。弟子入りまでを描いたアニメ第3話の感想・考察もご覧ください。
第9巻では、殴ることに爽快感まで覚えてしまった?
ところが、修行の成果と一緒に、少々気になるものまで身につけ始めました。
漫画第9巻第40話。取材で苛立ったリノキスは、対戦する虎獣人を前に、思い切り殴れば鬱屈した気分が晴れそうだと考えます。そして第41話では、実際に相手を殴っている間は不満や悩みを忘れられると語ります。
その姿を見たリネットも、ニアお嬢様に似てきたと指摘。ついには、かつて憧れた冒険家アバンを右拳の一撃でKOします。守るための修行だったはずが、いつの間にか戦う楽しさまで理解し始めているのです。
しかも、「気に入らない奴は殴ればいいのだ」という師匠の言葉に従って。

「侍女から戦士へ」どころか、戦闘狂への道を歩み始めているのでは……?
もっとも、リノキスは無差別な暴力を肯定していません。
相手が降参・失神しても攻撃を続けるアバンには、武人としての限度、そして守るべき節度、礼儀があると反発しています。
理性を失った「狂戦士(バーサーカー)」と決めつけるより、主人(ニア)に似て、戦闘そのものを楽しむようになった、と捉える方が正確でしょう。
ロベルタは逆。戦闘者としての過去からメイドになった
ロベルタは、リノキスとは逆の道を歩んだ人物です。
戦闘能力を身につけた後、ラブレス家の先代当主に助けられ、命を救われたことをきっかけにメイドとして生きる道を選びました。
しかし、主人の危機にはかつての戦闘者としての顔が戻ってきます。
彼女にとって戦闘力は、新しく獲得するものというより、過去から持ち続けている恐ろしい切り札です。
「侍女から、より危険な戦士へ」と「元戦闘者からメイドへ」
リノキスは、主人を守るため、さらに強くなろうとする。
ロベルタは、主人と生きるために戦闘者からメイドになった。
進んだ方向は正反対。それでも、人生の向きを変えた大きな理由が主人の存在だったという点は同じです。
リネット乱入! ニール坊ちゃまを狙った者への容赦ない報復
もう一人いた! ニール坊ちゃまに仕える侍女リネット
さて、リノキスとロベルタを比較していて、忘れてはいけない人がいました!
ニアの兄 ニール・リストンに仕える侍女リネットです。
生真面目で規律を重んじ、主人のニールを何より大切にするリネット。ニアから武術を学び、護衛としても力をつけていきます。
リノキスと同じ家の侍女なのですが、主人であるニールはニアとは対照的。
ニールは妹思いで責任感の強い少年です、その上魔法映像に出ると、老若男女問わずファンレターが届くほどの美少年です。
そして、その少年への危害はリネットにとって絶対に許せないことでした。
ウイングロードの撮影中、ニールが事故に見せかけて狙われる
漫画第7巻第33話。ウイングロードの撮影中、ニールが乗った単船に異常が発生し、機体から落ちたニールは、アンゼルに間一髪で救出されます。
単なる事故にも見えますが、撮影現場には不審な者たちが出入りし、アンゼルたちは人為的な工作を疑っていました。
事件直後にフレッサは、その連中を追いかけて潜伏先を突き止めます。
坊ちゃまが無事だったから、これで一件落着……とはなりません。リネットが黙っているはずがないのです。
リネットとフレッサ、襲撃者たちを徹底制圧
続く第34話冒頭で、リネットはアンゼルに犯人の心当たりを問い詰めます。

そして報復に動いたのはリネットだけではありません、ニールにちょっかい出したいのを我慢していたフレッサですが、(自分はさておき)ニールに怪我させようとした連中をつぶすため、リネットとフレッサが協力し、襲撃者たちを制圧します。
リネットは拳で相手を倒し、フレッサは糸で首を絞めるなど、ニアの弟子として恥ずかしくない闘いだったのではないでしょうか。
リネットは、二度と坊ちゃまを狙えないようにすることが先決だと考え、容赦なく追い詰めます。
アンゼルが制止した理由も、その怖さを物語っています。これ以上やれば捕まる、そうなれば坊ちゃまを誰が守るのか、と。
その言葉でようやく引き下がるリネット。愛情が暴走しかけても、最終的にはニールを守るという本来の責任に立ち返るのです。
ロベルタも、ガルシア坊ちゃまの誘拐でロアナプラへ
『BLACK LAGOON』漫画第1巻「Rasta Blasta」編。ガルシアが誘拐されたと知ったロベルタは、彼を取り戻すためロアナプラへ現れます。
そしてイエローフラッグでは、コロンビア・カルテルの構成員たちを相手に大銃撃戦。
こちらも「坊ちゃまに手を出した連中には容赦しない」という構図です。
リネットとフレッサは拳や糸、ロベルタは銃火器と手榴弾。
手段こそ違えど、坊ちゃまを守るための行動力は尋常ではありません。
最強幼女ニアと、正義感の強い美少年たち。主人の方も正反対!
リノキスの主人は、護衛よりはるかに強いニア
リノキスが守ろうとするのは、強敵との戦いを求めて自ら危険へ近づくニア。
身辺の世話や安全管理は侍女の仕事なのに、戦闘能力ではお嬢様が圧倒してしまいます。
だからリノキスは、お嬢様を守るために修行を始めた。それがいつしか、お嬢様と同じ方向に戦いの楽しさを見いだすようになるのです。
リネットとロベルタの主人は、どちらも正義感の強い少年
リネットの主人であるニールは、妹を守ろうとする責任感の強い美少年。
一方、ロベルタが守るガルシアも、幼いながら善悪を考え、自分の意思を示す少年です。
主人自身が強敵を探して暴れるニアとは、実に対照的。
「善良な少年主人を守るため、周囲を震え上がらせるほど強い女性が動く」という構図が、リネットとロベルタにはあります。
主人が危険を求めるのか、主人の危機に従者が暴走するのか
リノキスの場合は、ニアの暴走を止める役目が必要です。
ところがリノキス自身も、お嬢様に似てきたと指摘される始末。
リネットとロベルタの場合、普段は主人を守る従者が、主人の危機をきっかけに恐ろしい実力を発揮します。愛情が深いことは共通しても、その発火点は違うのです。
礼儀正しいのに怖すぎる! リネットとロベルタ、恐怖のカーテシー
そもそもカーテシーとは?
カーテシー(curtsy または curtsey)は、膝を曲げ、身体を低くする礼の所作です。
衣装によってはスカートの裾をつまんで行います。英語の courtesy(礼儀、敬意)と語源的につながる言葉です。
相手を敬うための、優雅な挨拶。そう、本来はそういうもののはずなのです。参考:Online Etymology Dictionary「curtsy」
リネットのカーテシー――「任せるわ」、恐怖の幕引き

漫画『凶乱令嬢ニア・リストン』第7巻第34話より引用(原作:南野海風/漫画:古代甲/キャラクター原案:磁石・刀 彼方/スクウェア・エニックス)。「任せるわ」のカーテシーを比較・批評するために掲載。
報復を終えたリネットは、アンゼルに後の処理を任せると告げ、静かにスカートの裾を持ち上げて礼をします。
暗い背景、俯いた表情、すっと伸びた姿勢。「任せるわ」という短い言葉と、優雅なカーテシー。これほど侍女らしい場面なのに、直前まで何をしていたかを思い出すと、とても穏やかな気持ちでは見られません。
リネットのカーテシーは、恐怖の幕引き。彼女にとっては礼儀正しい別れの挨拶でも、相手には忘れがたい光景だったでしょう。
ロベルタのカーテシー――「御機嫌よう」、恐怖の幕開け

漫画『BLACK LAGOON』第1巻第3話「Rasta Blasta PT-2」より引用(広江礼威/小学館)。「では皆様、御機嫌よう。」と手榴弾のカーテシーを比較・批評するために掲載。
こちらは、もっと直接的に恐ろしい場面です。「では皆様、御機嫌よう。」と告げ、スカートを広げて優雅に一礼するロベルタ。
ところが、そのスカートからは大量の手榴弾が転がり落ちています。
上品な別れの挨拶が、そのまま爆発の前触れになっているのです。
相手が「メイドって、そんな挨拶でしたっけ?」と聞く時間すらありません。
ロベルタのカーテシーは、恐怖の幕開け。
礼儀と恐怖が同居する二つの名場面
| 比較 | リネット | ロベルタ |
|---|---|---|
| 場面 | 坊ちゃまを狙った連中への報復後 | 坊ちゃまの奪還をめぐる戦闘中 |
| 言葉 | 「任せるわ」 | 「では皆様、御機嫌よう。」 |
| 礼の意味 | 後を任せて引き下がる | 手榴弾とともに立ち去る |
| 読者が感じる怖さ | 静かすぎる幕引き | 派手すぎる幕開け |
この二つは、ぜひ原作コマを順番に見比べてほしいところです。
どちらも、襲撃された側にとってはトラウマになってもおかしくないほど恐ろしいカーテシー。
なお、リノキスについては、漫画第9巻までにカーテンシーをしているシーンが見当たりません。
いずれ、ここぞというタイミングで出てくるのでしょうか??
結局、侍女とメイドは違うのか? 規格外の3人から考える
違いを決めるのは、戦闘力でも忠誠心でもない
最初の疑問に戻りましょう。「侍女」と「メイド」は、誰にどのような立場で仕えるかによって意味が分かれることがあります。
しかし、女性の主人に専属で仕える lady’s maid のように、両方の意味が重なる例もあります。
リノキスとリネットはリストン家の侍女。
ロベルタはラブレス家のハウスメイド。
作品が使う正式な呼称を尊重するのが基本ですが、「侍女だからメイドとは一切関係ない」とまで考える必要はないのです。
三人に共通していたのは、主人への愛情が重すぎること
リノキスは、ニアを守るために強くなり、ついには戦闘そのものの楽しさに目覚め始める。
リネットは、ニールを狙った者たちへフレッサとともに報復し、優雅な一礼を残して引き下がる。
ロベルタは、ラブレス家のガルシアを救うために元戦闘者の顔を見せ、手榴弾付きのカーテシーで街を震え上がらせる。
ついでに言えば、リネットはニールに褒められる未来を想像して、結婚の妄想にまで飛躍することもあります(漫画第8巻第36話)。こちらの愛情も、なかなかのものです。
侍女か、メイドか。言葉の違いを調べていたはずが、気づけば三人の重すぎる主人愛について考えることになりました。
結局、三人に必要なのは職業名の訂正より、主人を思うあまり少々やりすぎないようにする自制心なのかもしれません。
もっとも、あの二つのカーテシーを見た相手には、今さら何を言っても遅そうですが……。
関連する人物については、『ニア・リストン』キャラクター早わかりガイド(漫画第9巻までのネタバレあり)もどうぞ。
※本記事は非公式ファンサイトによる解説・考察です。辞書的な説明は外部辞書を参照し、各キャラクターの心情に関する部分には筆者の解釈を含みます。掲載した漫画画像は場面比較・批評のための引用です。権利者の公式コンテンツではありません。