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王国武闘大会に押し寄せた参加希望者は、実に一万人。賞金と名誉を求める武人、利益を狙うスポンサー、決定的な映像を撮りたい撮影班、そして人を殺すために選手へ紛れ込んだ暗殺者まで、まったく異なる思惑を抱えた者たちが同じ浮島へ集結します。
これだけの役者がそろいながら、第8巻でニア本人が戦う場面はほとんどありません。それでも物足りなさを感じないのは、ニアがこれまで鍛え、戦い、巻き込んできた人々が、今度はそれぞれの意志で動き始めるからです。
武闘大会という巨大な舞台の上で、ニアが蒔いた種が一斉に芽を出し、予想もしなかった対決へつながっていきます。
剣鬼アスマとの再会、クゥ・ユンシェイという怪物の登場、ニールとリネットの婚約、音速のジオンを襲う番狂わせ、そしてフリーズ対オーヤの暗殺者同士の死闘。
第8巻は、華やかな祭りが少しずつ命懸けの戦場へ変わっていく一冊です。
本記事では、コミックス第8巻に収録された第35話~第39話を、物語の流れと漫画ならではの演出を追いながら紹介します。
※この記事は、第8巻の勝敗、登場人物の正体、暗殺任務、最終ページまで触れるネタバレ記事です。
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『凶乱令嬢ニア・リストン』第8巻の基本情報
| 発売日 | 2026年2月6日(金) |
|---|---|
| 定価 | 770円(税込) |
| 判型 | B6判 |
| ISBN | 9784301003083 |
| 収録話 | 第35話~第39話 |
| 中心エピソード | 王国武闘大会・予選開幕 |
書籍情報:スクウェア・エニックス公式サイト
発売翌日の2026年2月7日には、Amazonコミック売れ筋ランキング第1位を獲得しました。
武闘大会の開幕を待っていた読者の多さが、そのまま初動へ表れた形です。

第8巻は「祭り」「成長」「暗殺」が重なり合う
第8巻の面白さは、トーナメント戦の外側まで大きく広がっています。
表では、参加希望者一万人以上を集めた武闘大会が、魔法映像、選手ポスター、物販、観光、国営賭博まで巻き込む国家規模の興行へ成長します。
その中心では、ニアの弟子リノキス(冒険者リーノ)、フレッサ(変装してフリーズに)、アンゼル、ガンドルフ、リネットたちが、自分の目的と覚悟を抱えて予選へ向かいます。
ところが、その盛り上がりを隠れ蓑にして、ウーハイトンの暗殺組織・脚龍(本家)も動き始めていました。
祭りが成功するほど裏側の危険も膨らむという構造が、武闘大会編に絶えず緊張感を与えています。
第7巻までに王都へ集まり始めていた強者たちは、第8巻でついに同じ舞台へ上がります。
大会の発案者であるニアが戦わなくても、彼女が作った舞台と、彼女が関わってきた人々がぶつかることで、物語はどこを切り取ってもニアへつながっていくのです。
ここからは各話の勝敗と、第8巻ラストの展開まで詳しく紹介します。
未読の方は、先に本編を読んでから戻ってくることをおすすめします。
第35話|一万人が殺到し、武闘大会が国家事業へ膨らんでいく
開幕前から、大会運営はパンク寸前でした。参加希望者が一万人規模まで膨らんだため、従来の方法では受付さえ終わらず、予選方式、会場、日程、賞金、支援金のすべてを組み直さなければなりません。
運営側(アルトワール王国)が次々と現実的な問題を洗い出す一方で、ヒルデトーラは、その混乱の先にある巨大な利益を見ていました。
選手の似顔絵を使ったポスターと関連グッズを販売し、魔法映像で大会を広め、国営賭博と観光によって国外からも資金を呼び込む。
ニアが王へ持ち込んだ「強者と戦いたい」願いは、いつの間にか国全体を動かす一大産業へ変わり始めています。
戦闘だけでなく、興行が生まれる過程まで描くあたりが、この漫画の真骨頂と言えるでしょう。
勇者の卵まで集う――大会は国境を越えた強者のるつぼへ
有力選手を探して会場を歩くニアとリクルビタァの耳に入ったのは、御剣大国スレンクラッドの勇者育成機関「勇星会」からも、二人の選手が参加しているという情報でした。
人類の希望とまで呼ばれる勇者の卵が、いったいどれほどの腕を見せるのか。
ニアの「ちょっと楽しみね」という一言によって、国家事業へ膨らんだ大会に、純粋な強者探しの熱が戻ってきます。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第35話 p.27、スクウェア・エニックス、2026年
剣鬼アスマとの再会――静かな姿の奥に、かつての激闘がよみがえる
有力選手の似顔絵を描くリクルビタァに同行し、浮島の会場を歩いていたニアは、建物の陰に座る編み笠の男へ目を留めます。
そこにいたのは、かつて闇闘技場で刃(正確には刃vsビール瓶)を交えた剣鬼アスマ・ヒノキでした。
以前より腕も氣も上がっているものの、ニアの目にはまだ、彼が氣を完全につかみ切れていないように映ります。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第35話 p.33、スクウェア・エニックス、2026年
意外と優しいアスマはニアたちの話を聞き、似顔絵を描かせてくれます。
すると今度は異国風の一団がニアの前へ現れます。
中心にいるのは、周囲の大男たちに比べるとひどく小柄な老人です。
ニアは外見に惑わされず、その身に潜む力量を即座に測ります。
大会の規模に驚かされた第35話は、優勝候補の基準そのものを変える人物の登場によって、次の話へ緊張をつなぎます。
第36話|最有力候補クゥと、別人に化けたフレッサ
老人の名はクゥ・ユンシェイ。武勇国ウーハイトン台国から来た暗殺組織・本家脚龍(キーロン)の老師です。
クゥは、目の前の幼い令嬢がただ者ではないと一目で察し、ニアもまた、一行の氣、身のこなし、実戦経験を短い対面の中で彼らの強さを測ります。
互いに探り合った末、ニアはクゥを現時点での最有力優勝候補と評価しました。
そしてリクルビタァはニアの言う弱者の勘からか、「ダメ、ダメ、この人たち 絶対ダメ」と震えます。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第36話 p.41、スクウェア・エニックス、2026年
それでも似顔絵を頼むニアお嬢様に対して、
クゥ「似顔絵?それだけ強いのだ、当然儂が何者かわかっていて言っているのだよな?」
と、暗殺者なんだから顔が売れるわけにはいかない、といったプレッシャーをかけます。
プロの殺し屋だろうが関係ないニアは更に突っ込みます(カッコイイ!!!)
ニア「優勝候補と見込んで頼んでいますが何か不都合でも?~~(中略)~~
もしかして自信がありませんか?夜襲の一つや二つが怖いですか?」
と煽る、煽る、そして最高のどや顔で煽る。
ピリつくクゥの取り巻き、逃げ出す周りの参加者(お前ら負けるぞ)、そしてリノキスは臨戦態勢の顔になる。
クゥ「はははは、好い好い。儂だけなら構わんよ、10歳くらい若くして男前に描いてくれるならね。
いい記念になる。儂が死んだときはぜひ一緒に棺桶に入れさせてもらうよ」
と軽口で返す、クゥ。これも強者の余裕でしょうか。
リノキスは勝てるかなあと不安をこぼしつつ、屋台のお菓子が気になる様子。
これも強者の余裕??
黒髪の美女フリーズ――フレッサの変装が見せる二つの顔
強者を探すニアの視界へ、続いて黒髪の美女フリーズが入ってきます。
その正体は、ニアの弟子であり、「薄明リノ影鼠亭」で給仕をしながら暗殺者としても活動するフレッサです。
髪型や顔立ちだけでなく、氣の雰囲気まで変えた姿は、日常的な変装ではなく、身元を消して仕事をする者の技術として描かれています。
フレッサの時とはまた違った美貌に惚れ惚れします。
なお、隣にいるのは闇闘技場でリノキスにサクッと負けたスカーレット(イロモノ枠??)

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第36話 p.50、スクウェア・エニックス、2026年
戦場へ向かうリネットを、ニールが婚約者として送り出す
強者と暗殺者が集まり、張り詰めた空気が続く中、リネットの妄想が爆発します。
選手宿舎へ向かう前にニールを訪ねたリネット。
リネットはニアの弟子であるものの金にも名誉にも興味がなく、ニール様推しに全振りの侍女です。
なので、本当は武闘大会に出たくないものの、師匠のニアに「強く」言われて出場することに。
ニール「頑張って来いよ!私は魔法映像で応援しているからな!」
リネット「あ、ええ。でもひと月近くニール様のおそばを離れることになりますので・・・
もしニール様がどうしても私と一緒にいたいというなら出場をやめても」
ニール「負けてもいいんだ、とにかく力の限り闘ってくれ!」
と真っ直ぐな目で言われてしまったので
リネット「・・・あ、はい」
まあこれは仕方ないですね、推しのニール様にこんなこと言われたら頑張るしかない。
そしてプラス思考に切り替えたリネットの思考(いや嗜好か?)は
大会で獅子奮迅の活躍→ニール様に褒められる→優勝などしたら

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第36話 p.60、スクウェア・エニックス、2026年
いつも冷めた目で周辺を警戒しているリネットはどこへやら、この乙女は誰?!
大変なことがおこりかねない!
そんな妄想リネットはさておき、ニアとリノキスのいつもの場面に変わります。
レリアの姉リクルビタァから来た手紙では、ポスター描きのヘルプが再度届きます。
キャラの濃い出場者、そしてサウザン・トーハゥロウたちのポスターも順調に描くリクルビタァ。
リクルビタァはリノキスが走る姿を見て、冒険者リーノと走り方が似ていると気付く。
ほんとにこの漫画は、各キャラのちょっとしたセリフを見逃せない!
サウザンはトーハゥロウに美味しいご飯を食べさせたいのか、真剣にお肉の美味しい店をニアに聞きます。
そんな二人ですが、氣の上位概念?か分かりませんが、「神氣」をまとっているとのことで、リノキス達の強いライバルになりそうな予感。
弟子への信頼と、未知の強者を求める武人としての本性が同時に表れたところで、国家放送が予選開始を正式に告げます。
ヒュレンツ国王「それではアルトワール王国主催武闘大会 予選開始を宣言する
大いに楽しんでくれ」
この国王様、ほんとに盛り上げるのがうまいなあ。
第37話|「頑張れよ 弟子共」――それぞれの覚悟を胸に戦場へ
武闘大会は予選が開始されましたが、武器あり部門と武器なし部門に分けられ、故意の殺害は禁止されます。(血しぶきや命を賭ける闘いの大好きなニアお嬢様は残念がりますが)
ただし、真剣勝負の結果として死者が出る可能性までは否定されません。
観客にとっては華やかな祭りでも、選手にとっては一歩間違えれば命を落とす戦場と言えるでしょう。
ニアは長々と励ますことなく、短い一言だけで弟子たちを送り出します。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第37話 p.87、スクウェア・エニックス、2026年
優勝候補のリーノが飛空艇から降りると、報道陣だけでなくクゥたち脚龍のメンバー、サウザン・トーハゥロウ、リネットにフリーズと、みんながリーノに注目し、強さを測ります。
リーノが武器を捨て、フリーズが逃げられる家を求める理由
リーノが選んだのは武器なし部門でした。武器を使えば実力差が大きすぎて「勝って当然」になり、大会を盛り上げる優勝候補としての役割を果たせないため、あえて自分へ制限を課したのです。
ニアの隣では規格外の主人に振り回される侍女ですが、一歩外へ出れば、各国の強者が警戒する冒険家であることが周囲の反応から伝わります。
一方、フリーズとして出場するフレッサが狙っているのは、大会の賞金で買える住居用の飛行船です。
追われる身になっても、場所を変えながら暮らせる拠点があれば、生き延びる可能性を高められます。
彼女にとって賞金は贅沢のための金ではなく、将来の逃げ道そのものだからこそ、たとえ試合で追い詰められても簡単には退けません。
身辺整理を済ませるアンゼルと、小さな再会の約束
ニアの弟子・アンゼルは、大会へ向かう前に、権利書、店、土地などの後始末をギースへ託します。
出発前に交わす一杯も、再会を願う乾杯というより、戻れない可能性を覚悟した別れの酒に見えます。
実際、クゥとオーヤは表向きこそ大会参加者ですが、その目的はアンゼルの殺害でした。
依頼主も狙われた理由も明かされないまま、アンゼルだけが死の危険へ近づいていきます。
そんな不穏な流れの直後、アンゼルは転落しかけたリクルビタァを受け止め、「薄明りの影鼠亭」の名刺を渡します。「店に来たら一杯おごる」という約束は、出来事だけを見ればささやかなものです。
その一杯が本当に実現するのかという不安が残りますが、恋愛とも友情とも決めつけられない新しい接点を、暗殺の予感と隣り合わせに置くのがうまい場面です。
第38話|音速のジオン敗北!最大の武器が自分の脚を砕く
予選初日、リストン領放送局のベンデリオは予選会場を巡っており、偶然フリーズに声を掛けられます。
フリーズはニア(リリー)の関係者とは距離を置いておく予定でしたが、撮影班という腕章を見て、リリーが最も憎む男『ベンデリオ』に声をかけてしまいました。
それはそうとして、注目試合を聞かれたベンデリオはフリーズへ気になる選手を教える。
フリーズもリリーの関係者ということで、「音速のジオンvsガンドルフ」が注目試合だと紹介する。
有名冒険家の勝利を疑う者がほとんどいない中、フリーズだけは「ジオンは負けますよ」と言い切りました。
その予言は、ジオンとガンドルフの相性を見抜いたうえでの確信だったのでしょう。
ジオンは負けますよ
開始と同時に、ジオンは異名どおりの速度で間合いを消し、全体重を乗せた蹴りを放ちます。
常人なら反応することさえできない一撃に対し、ガンドルフは避けようとも、先に攻撃しようともしません。
内氣の一つである硬氣によって筋肉を硬化させ、真正面から受け止める道を選びます。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第38話 p.136、スクウェア・エニックス、2026年
衝突の直後、脚を折ったのはガンドルフではなくジオンでした。
蹴りの威力、突進の勢い、全体重、硬い壁を蹴り抜こうとした反動が、すべて本人の脚へ返ったのです。
ガンドルフは攻撃することなく勝利し、ジオンの最大の長所だった速度は、そのまま敗因へ反転しました。
能力の数値ではなく、相性と選択によって決着する、本作らしい戦いです。
リノキスとの初対決ではローキック一発にやられて動けなくなったガンドルフですが、今回は逆にローキックを「避けず」にガードして勝利する、こういった比較で成長を感じさせてくれます。(リノキスとの初対決では、避けられなかった)
クゥの震脚――ニアの氣拳・轟雷へつながる技術
続くクゥ・ユンシェイの試合では、さらに高い次元の技術が示されます。
相手の攻撃を最小限の動きで外し、踏み込み、腰の回転、全身の捻りを一撃へ集約して、対戦相手を一発で吹き飛ばす。
床に残った跡と音から、ガンドルフはクゥが震脚を使ったことを見抜き、ニアから教わった氣拳・轟雷と同じ理屈だと分析します。
殺さないと勝てんわ
クゥはガンドルフの力量を認めながらも、本気なら殺さなければ勝てないほど差があると告げ、棄権を勧めます。
それでもガンドルフは、対戦が決まれば全力で挑むと答えました。
自分と相手の力量を正確に理解したうえで、なお戦う覚悟を崩さない二人のやり取りには、派手な必殺技とは違う武人同士の熱さがあります。
音速のジオン敗退という番狂わせは、その日のうちに王都へ広がります。
酒場では試合映像を求める声が上がり、予選券は高額で転売され、ジオンのスポンサーである、ククリジィフ・イーフは敗退報に絶叫する。
「嘘だろう!?」(→ホントです)
一試合の結果が、観客、魔法映像、チケット相場、スポンサーの思惑まで一斉に動かす結果となりました。
第39話|フリーズ対オーヤ――互いの正体を見抜いた暗殺者同士の死闘
予選2日目、前日のジオン戦を撮影しなかったベンデリオのもとには、視聴者から苦情が殺到していました。
そこで彼は、敗北を予言したフリーズへ当日の注目試合を尋ねます。
しかし、目立たず予選を通過したいフリーズは自分の試合を撮らせるわけにいかず、リネットを優勝候補として推薦し、撮影班の視線を別会場へ向けようとします。
「私は今日負ける」――オーヤが敗北を受け入れた理由
サウザンはオーヤを見て、優勝してもおかしくない強者だと評価します。
ところが、オーヤ自身は「私は今日負ける。私より強い者と当たるからだ」と静かに言い切りました。
優勝候補級の暗殺者が、戦う前から自分より上だと認めた相手こそフリーズです。
私は今日負ける
私より強い者と当たるからだ
試合を前に、オーヤとクゥの過去も明かされます。
若い頃、喧嘩に明け暮れていたオーヤを叩きのめしたのがクゥでした。
その強さに惚れ込んだオーヤは、クゥを兄貴と慕って付き従い、やがて暗殺現場と脚龍の刺青を目撃します。
本来なら正体を知った者は消されますが、クゥはオーヤを殺す代わりに脚龍(キーロン)へ誘い、オーヤも同じ暗殺者の道を歩むことになりました。
老いたオーヤは、自分が負ける姿にも意味があると考えています。
老人は決して超えられない壁ではなく、次の時代は若者が自分の力で作るべきだと、敗北によって後進へ示そうとしているのです。
勝つことだけに価値を置かず、自分の終わり方まで次代への教えに変えようとする覚悟が、オーヤを単なる敵役では終わらせません。
見えているのに攻められない――予見を封じる蛇のような連撃
試合場で向かい合った瞬間、フリーズとオーヤは、互いが武術家ではなく暗殺者という「同業者」だと見抜きます。
開始と同時にフリーズの眼へ光が宿り、オーヤはそれを相手の動きを先読みする予見、自分が届かなかった目の境地だと認識しました。
棍が振り下ろされれば、フリーズは攻撃が始まる前から動いてかわし、鋭い突きも紙一重で外す。
フリーズには攻撃の起こりも軌道も見えているのに、反撃へ移れません。
オーヤの棍は、突き、払い、振り下ろしが切れ目なくつながり、一撃を避けた先へ次の攻撃が追いすがるからです。
地を這う無数の蛇に追い立てられるような連撃によって、予見という優位が少しずつ封じられていきます。
棍がつま先をかすめただけでも激痛が走り、このまま守り続ければ、いずれ捕まる。
賞金を得て、逃げられる家を手に入れるためにも負けられないフリーズは、ついに危険を承知で攻勢へ転じます。
棍の大振りを潜り抜け、足で武器を押さえ、オーヤの蹴りを紙一重でかわしながら、一気に殺傷距離へ踏み込みました。
狙ったのは喉――完璧な必殺を外したオーヤ
フリーズが抜いたナイフの狙いは、肩でも腕でもなく喉です。
武闘大会の試合でありながら、相手を完全に殺す軌道で刃を放つ。
距離もタイミングも完璧で、逃げ場はないように見えましたが、オーヤは身体をわずかにずらし、喉へ向かったナイフを肩で受けます。

凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
第8巻 第39話 p.189、スクウェア・エニックス、2026年
渾身の一撃!
ナイフは当たったそれでも、仕留めることはできなかった。
肩に刃を刺されたオーヤと、予見を持ちながら追い詰められたフリーズの勝負は、決着がつかないまま第9巻へ持ち越されます。
あと1ページ、あと1コマだけでも続きが読みたいところで終わるからこそ、第8巻のラストは強烈です。
第8巻を読んだ感想|ニアの強さが、周囲の人間を通して見えてくる
第8巻では、ニア本人が前線に立って敵を倒す場面は描かれません。
それでも物語の中心には常にニアがいて、むしろ彼女の影響力が、これまで以上にはっきり見える巻になっています。
ニアが始めた大会へ、彼女が鍛えたリノキス、フレッサ、アンゼル、ガンドルフが挑み、かつて刃を交えた剣鬼アスマや、暗殺集団「脚龍(キーロン)」のクゥたちも同じ舞台へ集まります。
これまでのニアの強さは、目の前の敵を圧倒する形で描かれることが多くありました。
ところが第8巻では、その強さが周囲へ伝わり、人を育て、国の制度や産業まで動かした結果が、武闘大会という形で返ってきます。
個人の無双から群像劇へ視野を広げながら、どの物語もニアへつながっているため、主役が戦わない巻でありながら作品らしさが薄れません。
戦闘の組み立ても最高です。
ジオンの速度は、ガンドルフの硬氣によって本人へ返り、フリーズの予見は、オーヤの途切れない連撃によって反撃の機会を奪われます。
単純に強い能力を持つ者が勝つのではなく、相性、経験、判断、背負っている事情が一手ごとに絡むため、勝敗に納得できると同時に、次の対戦への期待も高まります。
武闘大会編は、まだ予選に入ったばかりです。
それでも、ガンドルフの硬氣、クゥの震脚、フリーズ対オーヤと、本戦級の見せ場が惜しみなく続きます。
ニア本人の無双だけではなく、ニアが作り上げた世界そのものが動き始める――第8巻は、シリーズの面白さが一段広がったことを実感できる一冊でした。
そして、大変なことが起こりかねないリネットにも大注目です!!
※リンク先は電子書籍版です。
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